涅槃茄子

ふわとろオムライス

希望、信じる心、天真爛漫、不公平【ポケモン剣盾感想】

オレともう一度勝負してくれないか!

すべてがはじまったこの場所……

……まどろみの森で!

 

 

 

ポケモン剣盾、最高!!!!!!!!!!(夏映画)

 皆さんはポケモンをプレイするとき、最も楽しみにしていることは何ですか?

 対戦はもちろん、新ポケモンや各BGM…といった要素もありますが、自分はその中でもシナリオを一番楽しんでいます。ま、小学生の頃からそうなんですけど……。

 今回のエンディング後シナリオをプレイし終えたのですが、「英雄の物語を示しながらそれに付随して紡がれるホップくんの再起と選択の物語」の構造があまりにも”””””良”””””すぎたのでこの感想を風化させないように記事を書くことにしました。九分九厘自分用です。

 

序:未来しかないな!

 この物語の役者たちを2種類に分けるとすれば、やはり「大人」と「子供」であるかと思います。ダンデやジムリーダーたち、ソニアといった「大人」は、ジムチャレンジャーである「子供」たちを見守り、支え、導こうとする。そうして育った子供たちは成長し、また次の世代へとバトンを渡していく。この両者が存在して初めて歴史は循環し紡がれていく……そのように感じられました。

 一方で、ローズ委員長らは「大人」ではありますが、今そこにいる子供たちへとバトンを渡すのではなく、より広範な未来へと目を向けていました。つまりは、大人と子供の両者で未来を作ろうとするのではなく、大人が一方的に先導しようとしていたわけです。この物語ではそれが行き過ぎてしまい、惨事を引き起こしました。最高齢の登場人物も言っていましたが、「年寄りを軽んじるのはもちろんよくないけどさ 年寄りがでしゃばっている世界もよくないからねえ」ということなのでしょう。多分ね。

 さて、おさらいはほどほどにしておき、ここでいう子供の視点から見たときに物語がどう映るかを考えます。

 ビートの場合。彼はローズ委員長に救われた、と語っていました。そして委員長の助けになりたいと考え、各地でねがいぼしを手段を問わず集めます。

 ホップの場合。彼はチャンピオンである兄に強い憧れを抱いています。それは兄の出ている試合をすべて見ており、頬を叩く仕草やボールを投げる動作すら似せるほどです。ジムチャレンジャーとなって、憧れの兄にようやく並び立てる…!そんな思いも胸中には多少ながらあったのではないでしょうか。しかしながら兄はやはり「大人」で、ナックルシティで騒ぎがあった時も「ここは任せて、自分のことをやるんだ」と言われます。

 2人に共通することですが、この世界の大人は子供にとって非常に頼もしく、だからこそ同時に「役に立ちたい / 自分も対等になりたい」という思いが生まれるのだと考えられます。それゆえに、主人公とホップが並び、最強無敗のチャンピオンすら膝をついた「伝説」へと立ち向かったあの戦いはある種の到達……「子供」が未来を切り拓くことの証明であると言えます。

いなくなった目標

  未来を示し最強無敗のチャンピオンにすら勝った主人公(以下ユウリと言います、なぜならぼくは女の子なので…)でしたが、対照的にホップはその変化に戸惑いを覚えていました。彼にとって兄ダンデは小さな頃から「最強無敵の象徴」であり、おそらくはそう在り続けるものでした。自身が対等なライバルだと思っていたユウリがその均衡を破るまでは。ホップからしてみれば、一日にして「目標」がいなくなり、「ライバル」が遠い存在となったのです。「子供」が成長し、世代が変わったがために、自分もまた変わらなければならないと考え、焦り、戸惑ったのです。

 「アニキに勝っちまうなんて本当にすごいぞ!……すごすぎてユウリのことよく分かんないんだ」…とまどろみの森で静かに語るホップは、ユウリと自身との距離を確かめようとしたのか勝負を挑みますが、逆に大きな差があることを突き付けられてしまいます。思い返せばユウリがチャンピオンとなる前もホップは自分の強さに悩み、手持ちのポケモンを何度か入れ替えていました。強くてごめんね……。悩むホップに追い打ちをかけるように、髪の毛でチャンバラしてそうな兄弟が突如として現れ、伝説の剣と盾を持ち去ろうとします。止めようとして勝負をしますが、ホップはまたも負けてしまいます。

 立ち去った兄弟の足取りを追うと、ジムスタジアムでダイマックスポケモンが暴れているとのこと。その鎮静の手伝いを頼まれたものの、負けが続いたホップは自信が無いように「役に立てるか分からない」「足手まといになるかも」と消極的でした。その場に居合わせたネズが「こういうとき君の兄なら迷わない」と言い、ホップは兄弟らによってダイマックスさせられたポケモンたちを助け始めます。

ズギャッと助けに行くっきゃないぞ!

  3つのジムスタジアムでダイマックスポケモンを止めたユウリたちは、ポケモン研究所で兄弟と相まみえます。ユウリとホップはダブルバトルで彼らに勝利しますが、兄弟の「研究所のねがいぼしを持っていく」という目的は水面下で達成されており、ソニアは落ち込む様子を見せます。が、しかし。「たしかに落ち込んだ!でもハイ!落ち込み終了!しょげてるヒマないでしょ!」と自らを奮い立たせるのです。この姿を見たホップは目を見開き、自身の決意を言葉にします。

「ユウリ!のんびりしてられないぞ!ポケモンたちをズギャッと助けに行くっきゃないぞ!」

 ユウリ、ホップ、ネズたちは各地のジムスタジアムで強引にダイマックスさせられたポケモンたちを改めて助けに行きます。ここから、ホップの再起の物語が動き出したのだと考えます。彼の物語が始まるきっかけはいつだってポケモンへの優しさが理由でした。まどろみの森へ迷い込んでしまったウールーを助けたいと思い、伝説との出会いを果たしたあの時のように。

 かつてのジムチャレンジと同じように各地を巡りますが、「子供」として導かれていた以前とは違うものがあります。今はポケモンたちを助けるためにジムリーダーたちと並び、協力しており、そこには庇護対象へ向けるまなざしというよりは、共に戦うに値するほどの成長への信頼が見て取れました。キルクスタウンのジムリーダー、マクワも「ユウリさんはもちろんですが ホップさんもなかなか頼もしいトレーナーですよね」と語りかけています。周囲の変化に対する焦りを感じていたホップは、周囲の変わらぬ温かさによって誰かの役に立てるのだと自覚し、自分の夢を見据え始めます。

終:「ライバル」

 英雄を含めたポケモンたちを助けた彼らは、まどろみの森に戻ってきました。伝説の英雄に認められたホップは、再びユウリへと勝負を挑みます。その顔つきには「自分も何かにならなければ」という焦りの色はありません。すべてが始まったこの場所で、ガラルを巡る一歩を踏み出したあの時と同じように、新たな道へと進む決意が感じられます。

f:id:joyU52:20191204141402j:plain


 余談ですが、このバトルのホップは頰を叩く仕草が無く、ボールを投げる動作も以前と別のものになっています。つまり、以前のように憧れの兄のモノマネではなく、自分の行き先を自分で決断したことを表していると思えます。こういう何気ない部分からホップが変化したのだということが語られているようで、本当にキャラクターに真摯に向き合っているのだと感じさせます。

 勝負を終えて、ホップは自身の夢を語ります。世界中のポケモンを助けられるポケモン博士になりたい。ユウリやアニキとは違う道を進むけど、これからもライバルでいてほしい。周囲が変化する中で何を目指せばいいのかわからず、ただただ焦燥感に急かされていた彼は、周囲に支えられて自分だけの目指す道を選択しました。

 ホップとユウリが話していると、いつのまにかダンデたちもやってきていました。彼らのポケモン勝負も見ていたようです。ダンデはホップへと語りかけます。

「ホップ!自分の進むべき道を見つけたんだな オマエのアニキとして……いや オマエのライバルとして応援してるぜ!」

 この言葉をもってして、ホップは憧れの存在であった兄ダンデと真に並ぶことになったと考えます。「子供」だった彼は成長し、次の世代へとバトンを渡す存在へと進み始めました。

 

 この記事の題とした「希望、信じる心、天真爛漫、不公平」というのはホップの花言葉です。最後の「不公平」は、ビールの原料に用いられるホップが雌花のみであり、雄花は不必要なものとされていることが由来だそうです。ここまでを振り返ると、周囲との差に悩みながらも選択を下した彼を表す物語性が強く感じられます。

 さて、なんかいい感じにまとまったのでこのへんで締めたいと思います。最後に、もしここまでお付き合いしてくださった方がいましたら、夢に向かって走り続けるホップに負けないよう、自分も強くなりたいという決意から一言。

 

 

 

 

6Vメタモンください!!!!!!!!!!